HS政経塾政策研究
2020年3月以降、塾生が卒塾時に作成した政策論文を『HS政経塾政策研究』として冊子化しています。
現在、以下の卒塾論文が国会図書館で閲覧可能です。
★『公立学校に宗教教育を! 』(※『HS政経塾政策研究第一号』第3期生:和田みな)
★『HS政経塾政策研究第二号 』(※第8期生卒塾論文)
★『HS政経塾政策研究第三号 』(※第9期生卒塾論文)
★『HS政経塾政策研究第四号 』(※第10期生卒塾論文)
★『HS政経塾政策研究第五号 』(※第11期生卒塾論文)
論文の概要は以下の通りです。
HS政経塾政策研究(第五号)
牛田久信
『首都直下型地震に備えた感染症を防ぐためのトイレ対策~自助と共助の対策を支える公助の役割~ 』
【要旨】
大震災に備えたトイレ対策をしていくことは、人間の命と尊厳を守るだけでなく、感染症の社会的蔓延を防ぐことにつながり、その重要性は高い。しかし、各家庭においても行政においてもトイレ対策の備えと意識はまだまだ不十分である。自助による携帯トイレの備えと、共助による仮設トイレの迅速な設置が必要であり、その対策を促進する公助の役割が期待される。自助のトイレ対策を促進する公助の役割として、①防災条例の改正、②消防法に係る点検項目の追加、共助のトイレ対策を促進させる公助の役割として、①防災訓練ソフトとしての式次第の作成、②地区防災計画の策定への働きかけ、③地域防災力の評価と強化を挙げた。
古田弘樹
【要旨】
本稿は民間の力が最大限発揮するための制度改革として、自由償却を提言するものである。自由償却の導入により、減価償却制度における資産の耐用年数を起業家が自由に決められるようになる。現行の減価償却制度は、耐用年数を法律で定め、強制している。例えば、5年で技術革新が起こる設備に対して 10 年の耐用年数と決められたとする。起業家は、本来5年で再投資をして、最新の設備で事業を行いたいところが、思い通りにいかなくなる。民間が力を発揮するためには、規制は必要最低限にするべきである。そのために、起業家の投資への規制をなくす自由償却が必要だ。
HS政経塾政策研究(第四号)
山中優宏
『「スパイ罪」の創設に向けた提言――「刑法」から見直し、スパイへの甘い認識を改める――』
【要旨】
日本で有効なスパイ防止体制を構築するには、基本法典である「刑法」に「スパイ罪」を創設し、「スパイとはどのような存在か」ということを法的に定義する必要がある。その上で、現行の「特定秘密保護法」や「不正競争防止法」を見直すべきだ。なぜなら、今の日本では、スパイを法的に定義しないことで、本来は「スパイ罪」である行為を、窃盗罪等の既存の基準で裁く法体制になっているからだ。「刑法」から抜本的に見直すことで、安保感覚の欠如した日本人の“スパイ観”に転換を促すことが、本稿の大きな目的である。
槇山理咲
『あるべき日本の歴史教育とはー戦前と戦後の見直しから考えるー』
【要旨】
義務教育段階における日本の歴史教育は、歴史評価基準に「一人ひとりの権利や可能性を尊重したか」「国家としての自立と気概を示したか」という聖徳太子の事跡に基づく価値基準を据えるとともに、人格陶冶を踏まえた年齢段階別の歴史教授を行なうことが大切だ。具体的には、小学生の段階では建国史や英雄の活躍を教えることで「国を誇りに思えるような視点」を育み、中学生以上の段階では徐々に過去の失敗の歴史からも学ぶことを許容し、人間として正しい生き方ができるような立派な人物を育てることである。なぜなら、歴史教育の本来の役割は、国民の人格の陶冶と愛国心の涵養にあるからだ。またこれは、戦前の歴史教育の間違いを乗り越える上でも重要だ。戦前に育まれた愛国心は天皇への愛情であり、朝廷の権威を軸とした歴史評価によって天皇に忠義を尽くす臣民づくりが行われていた。一方で戦後は進歩主義教育や実証主義・唯物史観によって愛国心、建国神話や英雄の存在が否定され、加害者史観・虚構の歴史の刷り込みが展開された。そこで、そうした戦前と戦後の間違いを乗り越えるために、歴史教育の柱に聖徳太子の価値観を据えることが大切だ。そのための具体的な一歩として、近隣諸国条項を撤廃することも提言したい。
HS政経塾政策研究(第三号)
笠原麗香
『危険な外国資本から日本の資産を守る―日本版 CFIUS の創設―』
【要旨】
中国のような安全保障上懸念のある外国の資本の活動が目立つ近年、日本は技術や土地といった国家の重要な資産を守るため、対内直接投資の審査体制を強化することが求められる。しかし、外国からの投資を規制する外為法は調査と審査が緩く、日本の重要な技術が含まれる投資案件を取り締まることができていない。また、自民党が進める安全保障上重要な土地に関する規制法案は、土地の取得そのものを止めないので、重要な土地を外国資本から守ることができない。一方のアメリカは、CFIUS という行政機関の長や政府関係者を集めた委員会が各省庁で連携して、対内直接投資の取引に対して安全保障の観点から厳密に審査を行っている。アメリカの重要な資産を守るうえで、CFIUS の使命は非常に大きい。よって、我が国においても、重要な資産を他国に取得されることを防ぐため、外国からの投資を厳密に調査・審査できる日本版 CFIUS の創設が必要と考える。
轡田日菜子
『日本のエネルギー安全保障を強化する ―ロシアからの LNG 輸入を考える―』
【要旨】
日本はエネルギーを安定して供給するために、中東だけでなくロシアとの経済協力を通してエネルギー資源の輸入を行い、その中でも特に LNG の輸入に力を入れるべきである。日本がエネルギー資源を中東やオーストラリアから輸入する際に通る南シナ海は、現在中国が軍事力を拡大している地域であり、安全保障上のリスクが高まっている。したがって、南シナ海を通らず、かつ輸送日数も短いロシアからの輸入を進めるべきだ。ロシアとの経済協力を強化することは、中露の関係深化を防ぐことにも貢献する。そのために、ロシアでの天然ガス開発の権益取得やプラントの建設が必要だ。それには、政府や政府系機関からの外交・金融面での後押しがいる。加えて、民間企業のロシア進出を促すために税制の見直しも行っていくべきである。
梅本茉弥
【要旨】
現在の子育て支援政策は児童手当等の給付が中心となっているが、これは政府の肥大化を招き、全体主義や監視社会へと繋がる危険性があるため変えなければならない。必要以上の給付は自助努力の精神や家族で支え合う意識を弱めるとともに政府への依存心を強め、政府の言いなりになる国民が増えてしまう。これを防ぐためにはドイツの経済学者ヴィルヘルム・レプケらが提唱した「家族や教会などの精神的な結びつきがある共同体が機能している健全な社会」を築かなければならない。そのために、家族の結びつきを弱める給付は廃止し、子育てや家族を一種の保険とみなして子育て世帯の国民年金保険料引き下げの実施を提案する。
水橋宏大
【要旨】
本稿は社会保障を必要最小限とするための第一歩として、介護保険制度における要支援の廃止を提言するものである。日本は長期にわたり社会保障の給付拡大が続いているが、政府による給付の拡大は「家族のあり方」や「自分の生き方」といった個人の自由を制限するだけでなく、「自分のことは自分でやる」という自立心をも失わせる。例えば、高齢化と家族介護への不安を解消するために創られた介護保険制度では、40 歳からの強制加入や賦課方式、価格の統制や公費の投入などによって個人の生き方への介入が行われ、手厚い支援が個人や家族で備え、地域で助け合う力を弱めている。しかし、本来の社会保障は政府からの支援ありきではなく、個人の努力と家族や地域で助け合うことが基本である。そうであるからこそ、まずは自立した生活を送ることができる人を対象にした要支援の廃止が必要であり、公的支援に頼らない家族や地域のネットワーク作りが求められる。
HS政経塾政策研究(第二号)
藤森智博
『日本版NECの検討-安全保障と経済の「あべこべ」を正し、中国を封じる行政システムの提言-』
【要旨】
グローバル化が進む昨今、安全保障に立脚する経済政策の実現が求められる。他国の経済に依存すれば、その国家の意向に逆らえなくなる。つまり、経済安全保障なしに国家の安全は保障されない。逆に言えば、経済戦略次第で外交を有利に進めうる。米国は既にこうした視点を持っており、その実現を国家経済会議(NEC)が担う。NECが適切な省庁間調整を行うことで、大統領の理念が具体化されている。だが、日本では、政・官・財が鉄のトライアングルとなり、日中友好に腐心し安全保障を損なっている。従って、安全保障の視点に立つ経済戦略の実現には、こうした既得権益とも調整を図る日本版NECが不可欠である。国防意識が弱い日本においては、NECが安全保障に反しないよう、国家安全保障会議(NSC)の権限を強化する必要もある。その一案として、NECに対して安全保障の観点から経済政策を検討させる調査請求権をNSCに確立させるべきと考える。
矢内美花
【要旨】
本稿は、施設養護と家庭養護の比較を通して、家庭養護の重要性を論じる。厚生労働省は2011年7月、「社会的養護の課題と将来像」の発表を皮切りに、「家庭的な生活」の実現を目的として、大型の児童養護施設の小規模化を推進してきた。しかし、施設を小規模化し、子どもの定員を減らすことで「家庭的な生活」を実現することはできない。むしろ、本当の「家庭」の中で子どもは育つべきだ。なぜなら、施設職員はあくまでも“職員”であり、施設は“職場”であるからだ。実際のところ、職員の勤務は交代制で、人事異動もあるため、職員と子どもの長期的な関係性を結ぶことは容易ではない。その反面、家庭養護の里親では養育者は子どもと同居し、“親”という立場で、より継続的な関係性、愛着関係を結ぶことが可能となる。政府は、子どもの健やかな成長の観点から、家庭養護の推進を急がねばならない。
加藤健太
【要旨】
2020年時点の国際・軍事情勢に基づいて我が国の島嶼防衛における対人地雷の必要性を述べた。オタワ条約調印前後、自衛隊は対人地雷を使用できなくなった。調印前後、日本国内では対人地雷を全廃する理想論が声高に叫ばれた一方、必要論を訴える識者は稀だった。軍拡と数々の軍事行動で周辺諸国にを威嚇する中華人民共和国は、増強した海軍を南西諸島以東に突破させ、米国の同盟破棄を迫る事を目論んでいる。それに対し、我が国は南西諸島に電子戦部隊と地対艦ミサイル部隊を配備する事で備えている。しかし、これらの部隊配備による島嶼防衛は、特殊部隊の潜入等による戦術への対策が万全ではなく、有事にこれらの部隊が襲撃される危険性がある。潜入する特殊部隊から南西諸島を守る為には、対人地雷が非常に有効である。
柄澤悠
『あるべき日本の愛国心教育とは-戦前および、海外主要国との比較から考える-』
【要旨】
本稿は「海外や戦前日本の事例を参考に、愛国心教育の正当性・必要性を再確認し、偏向の危険性を避けつつ、我が国で愛国心教育を実現する」ための研究である。結論は、「国旗・国歌」「偉人」「神話」という三つの観点から考察した。「愛国心は戦争の引き金になり兼ねない“危険因子”だ」とも言われるが、海外の例や思想家の意見を見れば、愛国心教育は「世界常識」であることが浮き彫りになる。2006年、日本では教育基本法改正が行われ、愛国心教育はやや重要視されるようになったが、現場での教育はまだ不十分だ。戦前教育の良い点は復活させ、寛容性に欠ける部分は改善することが大切だ。日本の教育は、今一度、恐れずに過去の知恵に触れることで更なる発展を遂げることができる。もはや、自国のみを絶対視する、視野の狭い“排他的愛国心”の時代は去った。グローバル化が進む現代だからこそ、日本と世界の発展のために、“調和的愛国心”を学び直すべきだ。愛国心を持ってこそ、個人の自由は促され、その魂が輝くのである。
中岡茉妃
【要旨】
変動する近隣情勢に合わせて日本も安全保障政策を構築してきた。しかし、実際に中国船の領海侵犯等を止められず、北朝鮮の不法漁船もEEZ等で十分に臨検できない。原因は、平時と有事の間にある「グレーゾーン」対処のための法律がないからである。海上保安庁の巡視船が国内の犯罪者を取り締まる警職法の武器使用規定を用いて、領海侵犯や不法漁船を取り締まり、中国の公船や海上民兵を乗せた漁船に対応するのは難しい。海上警備行動によって出動する海上自衛隊にも、警職法の縛りがかけられているため、領海を守る役割を果たしにくい。本論文は、グレーゾーン対処のための具体策を研究した。今後、領域警備法案の中に盛り込まれるべき要素として、海保については3点、海自については1点提案がある。海保においては①「領海侵犯罪」を制定すること②EEZにおいて行動が不審な船に臨検を実施すること③海保法25条を改正し、海保を準軍化すること(船の予算増額も必要)。海自においては、自衛隊法に「領海侵犯に対する措置」を新設し、防衛出動発令前にグレーゾーン対応として「武器の使用」を可能とすることを提言する。